2011年1月20日木曜日

おじいちゃんとコーヒー

おじいちゃんは濃いコーヒーが好きだった。小さいコーヒーカップに入った濃いコーヒーに、喫茶店で出てくるようなコーヒー用ミルクとスティックシュガーを入れて飲むのが好きだった。

高校に入学する春、腕時計を買ってくれることになって、2人で電車に乗って2駅離れた所にあったデパートへ行った。
たくさん並んでいる時計の中から、名前だけは知っていて、それはもう当時憧れだった「アニエスベー」の、針が矢印の形になっているものを選んだ。初めての、「ブランドもの」というやつだった。
帰りに、デパートの地下(今でいう「デパ地下」だけれど、あの当時はまだ「デパートの地下の食品売り場」)のコーヒーカウンターで、おじいちゃんはコーヒーを二つ頼んだ。初めてのコーヒーだったと思う。大人になった気がして、とても嬉しかった。この時に買ってもらった時計は、15年以上経った今も愛用している。

去年、春になる前に入院したおじいちゃんは、嚥下障害(飲み込むのが難しい)で通常の食事ができなくなっていた。すべての食事が姿かたちのない、とろみの付いたものだった。飲み物にも、トロミ粉を入れて、スプーンで食べさせることになっていた。その病院の一階には、ターリーズコーヒーが入っていたので、コーヒーを2人分買って、病室に上がり、トロミ粉を入れてスプーンで飲ませた。おじいちゃんは「あーこの苦みがおいしなぁ」とよろこんだが、「あんまり飲むと怒られる」「からだに悪いだろう」と言って、ふたくち、みくちでやめようとするのを「大丈夫だから、先生にもちゃんと許可もらっているよ」ともうすこし飲ませたのだった。

もうすぐバレンタインだから、コーヒーに合うチョコレートを、いつものようにおくろうとおもっています。

0 件のコメント:

コメントを投稿